2025.04.11

インビザラインで八重歯を治療する方法と期間・費用を歯科医が解説

「八重歯をインビザラインで治せるのか?」と疑問に思われる方は多いでしょう。結論から言うと、インビザラインで八重歯の矯正は可能です。ただし、歯並びの状態によって抜歯の必要性や歯の移動計画、期間が変わるため、慎重な診断が求められます。

インビザラインは、透明なマウスピース(アライナー)を用いた矯正治療で、目立たず快適に矯正を進められるのが特徴です。八重歯の治療では、スペースの確保が鍵となり、抜歯を伴うケースや歯列全体を調整するケースなど、治療計画は個々の歯並びによって決まります。

本記事では、八重歯をインビザラインで治療する方法や期間、費用の目安を詳しく解説します。歯科医の視点から、どのような症例でインビザラインが適応可能なのか、治療の流れやポイントについて説明していきます。

インビザラインでも
八重歯の治療は可能

インビザラインでも八重歯の治療は可能

「インビザラインでは八重歯の治療が難しいのでは?」と不安に感じる方もいますが、ワイヤー矯正と比較して治療成績が劣るとは考えていません。インビザラインは、透明なマウスピースで八重歯をしっかり覆い、矯正力をかけることが可能な治療法です。

八重歯の原因の多くは、歯列内に十分なスペースがないことにあります。そのため、治療ではまず歯が正しい位置に収まるためのスペースを確保することが重要になります。理想的な方法の一つは顎の骨のサイズを広げることですが、これは個々の骨格によって限界があり、顎骨の範囲内での移動に制約を受ける可能性がある点はワイヤー矯正でも同様です。

インビザラインでは、計画的な歯の移動によりスペースを確保しながら、八重歯を適切な位置へと導くことが可能です。治療の詳細な方法やアプローチについては、次のセクションで詳しく解説します。

インビザラインによる八重歯の治療方法:
スペース確保のアプローチ

インビザラインによる八重歯の治療方法:スペース確保のアプローチ

八重歯は、歯列内に十分なスペースが確保できなかった結果として生じるものであり、特に犬歯が萌出する時点で顎骨のスペースが不足していたことが主な要因です。そのため、八重歯の矯正治療では、基本的に「どのように歯列内に十分なスペースを確保するか」が重要になります。

ここでは、インビザラインによる八重歯の治療方法を詳しく解説します。

①遠心移動:
奥歯を後方へ動かしてスペースを作る

最も一般的な方法の一つが、大臼歯から順番に遠心(後方)方向へ移動させることでスペースを確保する方法です。遠心移動により、歯列全体のバランスを保ちながら、八重歯が適切な位置に収まるためのスペースを徐々に確保していきます。

ただし、この手法は時間を要することが多く、遠心移動できる距離には限界(一般的に2~3mm程度)があるため、この方法だけでは八重歯が改善できないケースもあります。その場合は、他の方法と組み合わせる必要があります。

②歯列弓の側方拡大:
アーチを広げてスペースを作る

歯列が狭くなっていることが、スペース不足の原因である場合、歯列全体を側方へ拡大し、U字型の理想的なアーチ形態へと調整する方法が有効です。

八重歯の患者様の中には、歯列が狭く、V字型や馬蹄型になっているケースが見られます。このような場合、歯列を側方へ広げることで、スペースを確保しやすくなります。特に、奥行き方向ではなく側方へ拡張することで、より広いスペースを確保できる可能性があります。

ただし、既存の顎骨の幅を大きく超えるような拡大は不可能であり、骨の構造的な制約があるため、拡大できる範囲には限界があります。適切な診断のもと、無理のない範囲で側方拡大を取り入れることが重要です。

③IPR(歯の隙間を削る方法):
できる限り避けるべき手法

IPR(Interproximal Reduction)とは、歯と歯の間のエナメル質をわずかに削り、物理的に隙間を作る方法です。これにより、スペースが確保され、八重歯の改善が可能になることもあります。

ただし、私はできるだけIPRを行わない治療計画を立案することを基本方針としています。なぜなら、エナメル質を削ることで歯の耐久性が低下したり、形態不良を引き起こすリスクがあるためです。また、過度なIPRは、矯正後の歯の形態に影響を及ぼし、審美性や咬合バランスにも悪影響を及ぼす可能性があります。

とはいえ、上下の歯のサイズが極端にアンバランスな場合(Bolton不調和)には、バランスを取るためにIPRを適用せざるを得ないこともあります。このようなケースでは、適切な範囲でIPRを活用しながら、可能な限り歯に負担をかけない治療計画を立案します。

④抜歯矯正:最後の選択肢

上記の①~③の方法で十分なスペースを確保できない場合、抜歯を伴う矯正治療を検討することになります。特に、八重歯が完全に歯列の外に逸脱しているケースでは、相当なスペースが必要となるため、抜歯が最適な選択肢になることがあります。

一般的に、八重歯を歯列内に収めるためには、そのすぐ後ろにある第一小臼歯(4番目の歯)を抜歯し、そのスペースを活用して犬歯を移動させる方法が用いられます。これは、ワイヤー矯正でも行われる方法ですが、インビザラインでも適切な治療計画を立案すれば、同様にスペースを確保し、八重歯を理想的な位置に導くことが可能です。

抜歯矯正は、確実に八重歯を改善できる方法ですが、できる限り①~③の手法で対応し、過度なIPRを行うくらいであれば抜歯を選択した方が、歯への負担が少なく、長期的な健康を考えたときに優れた治療計画となることもあります。

まとめ:インビザラインでの八重歯治療は適切なスペース確保が鍵

八重歯の矯正治療では、どのようにスペースを確保するかが最も重要なポイントです。インビザラインでも、ワイヤー矯正と同じように、遠心移動・歯列の側方拡大・IPR・抜歯といった方法を組み合わせながら、個々の症例に応じた最適な治療計画を立案することができます。

インビザラインで八重歯を治療する場合、抜歯せずに治療可能なケースも多く、適切な診断と計画次第で効果的な結果を得ることができます。しかし、すべてのケースが非抜歯で対応できるわけではなく、必要に応じて抜歯を選択することで、より理想的な仕上がりを実現できる場合もあります。

重要なのは、患者様一人ひとりの歯並びや骨格に合わせた治療計画を立てることです。当院では、科学的根拠と豊富な臨床経験に基づいた治療プランを提供し、インビザラインを用いた八重歯の矯正に対応しています。八重歯の矯正をお考えの方は、まずは精密検査とカウンセリングを通じて、ご自身に最適な治療法を知ることをおすすめします。

インビザラインで八重歯を
治療できないケースについて

インビザラインで八重歯を治療できないケースについて

基本的に、インビザラインで八重歯が治療できないケースはほぼありません。適切な診断と治療計画を立てれば、多くの八重歯症例に対応可能です。

しかし、例外的にインビザライン単独では治療が難しい、または適用が困難なケースも存在します。

①顎骨のサイズが大きく不調和なケース

インビザラインが適応困難なケースの一つに、上下の顎骨のサイズが著しく不調和であり、かつ八重歯がある場合が挙げられます。このようなケースでは、歯列の調整だけでなく、骨格のズレを根本的に解決する必要があるため、矯正治療のみでは十分な改善が得られない可能性があります。

特に、重度の顎変形症を伴う症例では、外科的矯正(骨切り手術)を併用することで、理想的な咬合関係を確立する必要が出てきます。ただし、これは八重歯が原因で適応外となるのではなく、骨格的な問題が根本にあるために、外科的アプローチが必要となるというケースです。

②保存困難な八重歯
(重度の虫歯・歯周病)

八重歯が原因で歯磨きが困難になり、大きな虫歯が進行してしまった場合も、治療計画の再検討が必要になります。

特に、以下のような状態の八重歯は、保存が困難または矯正治療に耐えられない可能性があります。

  • 重度の虫歯により、健康な歯質が極端に少ない
  • すでに神経を除去しており、歯の構造が脆弱になっている
  • 歯周病が進行し、歯の動揺が著しい
  • 矯正治療後の長期的な予後が不良で、将来的に抜歯リスクが高い

このようなケースでは、無理に矯正を行うことで歯の寿命を縮めるリスクがあるため、場合によっては八重歯自体を抜歯する選択肢も考慮されます。

ただし、犬歯は咬合理論上非常に重要な役割を果たす歯であり、可能な限り保存することを優先します。

③埋伏している八重歯
(顎骨内に埋まっている場合)

通常、八重歯は歯列から逸脱して萌出している状態ですが、稀に顎骨内に埋伏してしまっているケースもあります。埋伏歯の場合、インビザラインのマウスピースを装着したとしても、歯を自然に萌出させることはできません。

この場合、治療の選択肢としては、以下のような方法が検討されます。

  • 適切なスペースを確保した後、開窓牽引(外科的に歯肉を開いて歯を引っ張る治療)を実施する
  • ワイヤー矯正やその他の固定式装置を併用しながら、歯を徐々に引き出す

つまり、マウスピース単独では治療が困難な症例となるため、ワイヤー矯正など他の装置と組み合わせた治療が必要になります。

まとめ:
インビザライン適応外となるケースは限定的

インビザラインによる八重歯の治療は、適切な診断と計画のもとでほとんどのケースに対応可能です。しかし、以下のようなケースでは、インビザライン単独では治療が難しく、他のアプローチが必要となることがあります。

  • 上下の顎骨のサイズが極端に不調和であり、外科手術を併用すべき場合
  • 八重歯が重度の虫歯や歯周病によって保存困難な場合
  • 八重歯が顎骨内に埋伏しており、開窓牽引が必要な場合

これらのケースでは、矯正治療の成功率や長期的な予後を考慮しながら、適切な治療方法を選択することが重要です。当院では、患者様の口腔状態を精密に診断し、最適な治療計画を提案しています。八重歯の治療を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。

インビザラインで八重歯を治すのにかかる期間と費用について

インビザラインで八重歯を治すのにかかる期間と費用について

八重歯の矯正治療にかかる期間や費用は、患者様の歯並びの状態や治療方針によって大きく異なります。これは八重歯に限った話ではなく、インビザライン矯正全体において、使用するマウスピースの枚数や治療の難易度によって複数のプランが存在するためです。ここでは、八重歯の治療にかかる一般的な期間と費用について解説します。

インビザラインの治療プランと
マウスピースの枚数

インビザラインの治療方法としては、遠心移動・側方への歯列拡大・IPR・抜歯などの手法があり、八重歯の症例では奥歯を含めた全体的な歯の移動が必要となるケースが多いです。この場合、使用するマウスピースの枚数が50〜100枚程度になることもあり、インビザラインの中でも最上位のプランが適用されます。

このプランを用いた場合の治療期間は1~2年程度が一般的であり、費用は70万~100万円程度になることが多いと考えられます。これは、矯正の機能性・審美性を最大限に考慮し、適切な咬合バランスを整えながら治療を進めるために必要な期間と費用といえます。

短期間・低コストでの治療は可能か?

「もっと早く、安く治療できないのか?」という質問を受けることもあります。理論上、以下のような方法を取ることで、治療期間と費用を抑えることは可能です。

  • 奥歯の咬合関係を度外視し、前歯だけを動かす
  • 多量のIPRを実施し、スペースを無理に確保する
  • 推奨されない犬歯の抜歯を行い、強引にスペースを作る

このような方法を採用すれば、治療期間を3ヶ月~1年程度に短縮し、費用を30万~50万円程度に抑えることも考えられます。しかし、この方法は極めて短絡的なアプローチであり、推奨される治療計画とはいえません。

短期間で治療を終えることを優先しすぎると、咬合のバランスが崩れ、後戻りしやすくなったり、歯の健康を損なうリスクが高まります。また、無理なIPRによるエナメル質の削減や、犬歯の抜歯による噛み合わせの不安定化が生じる可能性があるため、結果的に将来的な口腔機能の低下につながる危険性があります。

治療計画の選定:
何をゴールとするのか?

矯正治療は、単に見た目を整えるだけでなく、正しい咬合関係を構築し、長期的な口腔の健康を守ることが目的です。そのため、治療計画を決定する際には、自身が何をゴールとし、何を求めるのかを慎重に考える必要があります。

例えば、

  • 審美性だけでなく、しっかりとした噛み合わせを確保したいのか
  • 治療期間を短くしてでも、とにかく見た目だけを改善したいのか
  • 将来的な歯の健康を考慮し、最適な治療を受けたいのか

といった視点を持ち、長期的な視野で治療を検討することが重要です。

当然ながら、一時的な短期間・低コストの治療を選択した場合、後戻りや機能的な問題が発生する可能性があるため、将来的に再治療が必要になるリスクも考慮しなければなりません。

私は、治療を急ぐあまり適切な治療計画を犠牲にすることはおすすめしません。しかし、患者様がしっかりと治療のメリット・デメリットを理解し、長期的な視点を持った上で決定されるのであれば、最終的な選択は尊重します。そのためにも、担当医とよく相談し、ご自身にとって最善の治療計画を見極めることが大切です。

まとめ:適切な治療期間と費用を理解した上での選択を

インビザラインによる八重歯の治療期間と費用は、使用するマウスピースの枚数や治療の難易度によって大きく異なります。

  1. 標準的な治療計画治療期間:1~2年 / 費用:70万~100万円
  2. 短期間・低コストの治療(非推奨)治療期間:3ヶ月~1年 / 費用:30万~50万円

短期間での治療が可能な場合もありますが、それには咬合のバランスや歯の健康を犠牲にするリスクが伴います。そのため、治療計画を決定する際には、単なる治療期間や費用だけでなく、将来の歯並びや咬み合わせの安定性も十分に考慮することが必要です。

矯正治療は今後の人生に大きく影響を与える選択となるため、適切な治療方針を選ぶことが重要です。私たちは、患者様一人ひとりの希望やライフスタイルに合わせた最適な治療プランをご提案いたしますので、気になる点があればぜひご相談ください。

八重歯を治療せずに
放置するとどうなる?

八重歯を治療せずに放置するとどうなる?

八重歯を矯正せずにそのまま放置すると、見た目の問題だけでなく、咬合(噛み合わせ)や口腔の健康にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。特に、犬歯が適切に機能していないことによるデメリットを理解することが重要です。

犬歯誘導が得られないことによる影響

天然の歯並びにおいて、最も理想的な咬合様式のひとつが「犬歯誘導」です。これは、噛み締めたときにはすべての歯が均等に咬合し、下顎を左右に動かした際には犬歯のみが接触し、他の歯が噛み合わない状態になることを指します。この仕組みがあることで、奥歯や前歯に過度な負担がかかるのを防ぐことができます。

歯は、垂直方向の力には比較的強い構造を持っていますが、側方(横方向)からの力には弱いという特徴があります。しかし、犬歯は歯根が長く、強固に埋まっているため、側方の力にも耐えやすい歯とされています。そのため、犬歯誘導が適切に機能していないと、側方の力が他の歯に分散されてしまい、前歯や奥歯への負担が増加し、歯の摩耗や破折のリスクが高まるのです。

特に、犬歯誘導が失われた状態では、前歯に過度な負担がかかり、歯が削れたり、動揺しやすくなる原因になります。また、奥歯にも負担が集中し、歯の破折や詰め物・被せ物の脱離、さらには歯周病の進行リスクが高まる可能性があります。これらは、長期的に見て歯の寿命を縮める要因となるため、適切な咬合を確立することが非常に重要です。

セルフケアの困難さと
口腔衛生への影響

八重歯のもう一つの大きな問題は、歯磨きなどのセルフケアが困難になることです。歯列から逸脱して生えている八重歯は、歯ブラシの毛先が届きにくく、プラークや食べかすが溜まりやすいため、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。

特に、犬歯は歯根が長く、他の歯よりも歯周病の進行が早くなる傾向があるため、適切なケアができないと、周囲の歯肉が炎症を起こし、歯周病が進行しやすくなるのです。さらに、歯列が乱れていると、フロスが通しにくくなり、歯間部の清掃が不十分になりがちです。その結果、隣接面(歯と歯の間)の虫歯や歯肉の腫れが起こりやすくなるため、口腔内の健康を維持することが難しくなります。

八重歯を治療する意義

矯正治療を行い、八重歯を適切な位置に移動させることで、犬歯誘導を確立し、噛み合わせを最適化することができます。これにより、前歯や奥歯の負担を軽減し、歯の摩耗や破折を防ぐことが可能になります。また、歯並びが整うことで、セルフケアがしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを低減できるというメリットもあります。

八重歯の矯正は、見た目の改善だけでなく、長期的な口腔の健康維持にとっても非常に有益な治療です。咬合のバランスを整え、健康的な歯並びを維持するためにも、八重歯の矯正を検討することは非常に重要だといえるでしょう。

インビザラインで八重歯を治したい方は、
KAM Dental OKAYAMAにご相談ください

インビザラインで頭痛が起こるか心配な方は、岡山市北区のKAM Dental OKAYAMAにご相談ください

八重歯の矯正は、見た目の改善だけでなく、噛み合わせや口腔の健康維持にも重要です。インビザラインを活用することで、目立たず快適に八重歯を治療することが可能です。

当院 KAM Dental OKAYAMA(岡山市北区)は、インビザラインの公認指導医(ファカルティ)が在籍する医院です。豊富な経験と高度な技術力を活かし、患者様一人ひとりの歯並びに最適な治療計画を立案します。

また、遠隔モニタリングを活用し、通院負担を最小限に抑えながら精度の高い治療管理を行っています。インビザラインで八重歯の矯正を検討されている方は、ぜひ KAM Dental OKAYAMA へご相談ください。経験豊富な専門チームが、理想の歯並びへと導きます。